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「カタルシス Remaster」解説
 
【Tets Kosaka】
「カタルシス Remaster」は、2002年に里園として初めて発表したアルバムを、最新の音質・音圧で再リリースする作品です。

私は中学校の時から曲作りを始めましたが、メロディの志向や自作の歌詞は何故か女性ヴォーカリスト向けばかりでした。
妹とは3歳の差があったので私が『アーティスト』として目覚めてもまだ歌い手はおらず。それが妹も中学生時分になり、やっと目覚めたのか、『本気の楽曲』を2人で初めて作りました。それが「Endless sufferin'」。2000年ですから、私18歳・妹15歳の頃。
当時既にインターネットにどっぷりであったため、発表はまずWebSite上。そこで2曲たまったら、もう1曲はネットには出し惜しみして、3曲入りのSingle盤をCD-Rで自主制作する、という流れを6th Singleまで続けました。

アルバム「カタルシス」は2nd Singleまでの6曲にネット発表の4曲・未発表3曲を加え、13曲入りで2002年に制作。いま思うと、一般のミュージシャンに比べやや曲数が多いですね。どうしてこんなに大盛りにしたんだったか……?

この時期は全曲、妹が作詞/私が作曲・編曲の担当で固定です。しかし私はまだコードの概念すら曖昧でした。ただ感覚だけで和音を積み上げてアレンジするといった具合で、よく成立していたものです。生演奏もまったくできなかったので、音は全て打ち込み。
間奏などでところどころBassが無い部分があるのが、今は無性に気になりますね。よっぽどの狙いが無い限り低音は外さないのがセオリーなんですが、当時はそれすらわかっていなかったのです。
音を左右に振り分けるステレオ感にも気を配っておらず、ほとんど真ん中に固まってしまっている曲多し。
そうやって未熟な点は挙げたらキリがありません。しかし、『良いメロディーを書く』事だけは妥協しませんでした。そしてメロディーさえ良ければ、音質が古くてもいつまでも聴けると信じています。

妹は初めから、歌詞を書くスピードがものすごく早かったですね。だいたい一晩二晩で書いてしまいます。初期はメロディーを先に作ってそこに言葉をはめる方式だったので、余計に難しかったはずなのに。こいつは天才だ、と本気で思いました。しかも歌も練習無しで上手いし。

初期の特徴として『ダブル』の使用があります。1st Singleの3曲と「ナイフ」。歌を二重に録って厚みを出す手法です。その頃はBeatlesも聴いていたのでアリだと思ったのでしょう。安物のマイクで細い音しか録れなかったのを補う意味もありました。歌に慣れるにつれ、また高いマイクを買ったりして、ダブルを使う事はなくなってゆきました。

使用機材はYAMAHA「MU100」とRoland「SC-88ST」でしたね。決して太い音は出ませんが、これしか手に入らない中で、なんとかかんとかやっていました。

リリース当時の音を聴き返してみると、異様に低音が大きいミックスです。スピーカーの置き方でも悪かったのでしょうか……?リマスターするにあたり、かなり補正しました。元と比較して、劇的に音質向上している筈です。
 
【曲解説 by Tets Kosaka】
■嘆き詩(ナゲキウタ)
ドラムとベースのパターンは富樫明生作品の影響だと思います。メロディはキメキメのハモリ部分が気持ち良いですね。
初期には珍しく、間奏をちゃんと作っています。「10年」というキーワードに呼応して松任谷由実「未来は霧の中に」を意識したような気もしますが、あちらはヴォコーダーですし、そんなに似てもいませんね。

■fairy tale
音楽理論の初歩をやっと勉強し始めた頃で、新しく知った響きを利用して作った曲。
リズムはJungleっぽい32beatの感じで作りました。ウワモノはCarpenters「Happy」の影響でしょうか。
サビの最後に「ダメじゃん!」と隠しセリフが入ってます。

■Again and Again
Aメロとサビの譜割りをまったく同じに作ってみたんですが、ちょっとダサいかもしれません。
歌詞に「時間」という言葉が入っているのを見てから、カチコチという音をリズムに取り入れました。
シーケンスはこれもDA PUMP「if」の影響が入ってますね。

■PRISONER - がっこう。- [2nd Single収録]
明らかに初期Coccoの影響を受けたハードロック。
『ギターリフ』を中心にアレンジしたのはここ十数年でもこの曲ぐらいです。エンディングも気合入ってますね。
当時のLIVEではあまりやりませんでした。叫び部分で客が引いちゃうでしょうし……。

■replay [1st Single収録]
シンセシーケンスのアルペジオが音の中心。コードを知らないからこそこんな出来になりました。下手に理論を勉強してから一時期は、こんな自由な音運びができなくなってしまったものです。
メロディーやリズムは初期浜崎あゆみあたりをイメージした気がしますが、結果的にはそんなに似ていないでしょう。

■リボン
歌の直前部分はモロにCarpenters「Top of the World」ですね。低音で『フー!』と挟むのもCarpenters「Love is Surrender」の『テゥー!』が由来。
一時転調を挟んだりして、アルバム中ではちょっと凝った楽曲ですね。

■Endless sufferin' [1st Single収録]
暗〜い学生時代を送ってたもので、Aメロは暗い暗い。でもドラマチックな展開の後、サビでちょっと開放されます。明るい部分はCocco「Raining」のイメージもありました。
ジャリジャリにローファイなオープンハイハットやシタールなど、不思議な音世界。

■夜の子供
スガシカオにどっぷり影響されてできたFunk。アレンジの元ネタは「310」辺り。
この声質でこんなジャンルまでやらせてしまうところが乱暴ですね。ごった煮アルバム。

■硝子人形(ガラスドール)[2nd Single収録]
レゲエのようなタイミングでエレピが鳴るアレンジ。Cocco「強く儚い者たち」の影響ですね。
Bメロでさりげなく転調するところは鍵盤で音を探っていて偶然できたもの。演奏含め2日くらいのすごいスピードで完成してしまった覚えがあります。
口当たりが良いので、当時のLIVE(カラオケ方式)ではほぼ毎回セットリストに入れていました。

■ナイフ
「何にも似ていないリズム」を目指して制作。その姿勢そのものが、Timbalandの影響とも言えますが。
シンセシーケンスのパラメーターを波打つように動かしてウネウネ言わせています。当時はこの程度でもややこしい作業でした。
メロディは細かい動き。16分音符が4連続する部分をAメロ・Bメロ・サビでずれるように計算して作ってあります。
詞に同時多発テロの影響がチラリとありますかね。

■once upon a time [2nd Single収録]
ポルタメントがかかったシンセはLUV 2 SHY「Phantom Of Love」やSpice Girls「Say You'll Be There」あたりから。
鍵盤ハーモニカは明らかに椎名林檎「丸の内サディスティック」の影響。
オリジナル音源は最後のシンバルの余韻が足りなかったので、今回ちょっとだけ響きを重ねました。

■Colorless days [1st Single収録]
他の曲とはまた異質の4つ打ち系。TWO-MIXの影響ですね。オケヒットなんかそのまんま。
909スネアの連打は初期globeあたりから学んでいると思います。

■満月夜(みづきよ)
ギターの音色ではありますが、当時本物を弾けなかったのでフレージングが鍵盤の発想になってしまっております。
2番から音数が増えるのはこの曲とEndless sufferin'くらい。


【曲解説 by 里園】 ※2002年版歌詞ブックレットの内容をそのまま掲載しています
■嘆き詩(ナゲキウタ)
ナゲキウタというのは、私の書いてきた言葉のこと。でも大丈夫〜のサビは、皮肉的です。

■fairy tale
明るいメロディーにロマンチックな物語、そして最後にはショッキングなオチ。三番まであってやっと完結する話。

■Again and Again
恋愛的歌詞。ありふれた歌詞は嫌いだったけれど。しかりやはり刹那系。歌い方に哀愁を込めました。

■PRISONER - がっこう。-
声に感情が。ハモリが激高音。このときにしか書けなかったであろう歌詞になりました。叫んでます。

■replay
隠れ名曲。歌詞がとても特殊(自分的に)。少し前向きに終わるところも素敵。それが題にも。音程が中々とりにくいです。

■リボン
赤リボン=みんな同じ血の色の繋がり。人間だけではなく更に大きな意味で。歌詞がずっと完成しなかった苦労作。

■Endless sufferin'
全てはここから始まる。里園、その歌詞、歌い方、個性、スタイルが完成。何もかも初めてで手探りでした。

■夜の子供
「PRISONER」の続編みたいな。ファンクは受け入れられるか?「僕ら」の世界=深い闇=夜=苦悩の子供達。

■硝子人形(ガラスドール)
歌い方に合っていて聴きやすい。ガラスドールは造語。抽象的で聴く側に想像させる歌詞にしてみました。

■ナイフ
一番が戦争の事、二番がお金と人との事、サビでは前向きな姿勢を。題は、あらゆるものは武器になりえるという象徴。

■once upon a time
味わい深く、小説が出来そうな程風景が溢れている歌詞。力が無い為中学生初歩程度の英語詞に。

■Colorless days
歌詞がまとまっているなぁと思う。冬の、色の無いモノクロの世界のイメージ。ものすごい読み方をする漢字多し。

■満月夜(みづきよ)
美しい情景。歌が伸びやかで美しく響くシンプルバラード。締めの名曲。舞香花は沖縄で月夜に甘い香りを漂わす花だそうです。

■カタルシス
浄化の意味。浄化は浄化でも、リアルな哀しみを聴いてこそ癒されるということ。そんな存在になりたいという願いを込めて、この声が必要とされるところへ届きますように。