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雑カヴァ「ひこうき雲」
 
- DATA -
原曲:「ひこうき雲」荒井由実(1973年)
カヴァー:Tets.K
アレンジ:ピアノ(ややフレーズ合成)
 
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 荒井由実/松任谷由実には中学時代ドップリとハマっていた。その時点では「歌詞とメロディがなんとなくいい」という程度の認識である。ところがその後、音楽理論を学んでから改めて聴き直してみると、ものすごかった
 元々好きな上に学ぶところが多いので、大量にカヴァーしてみようと思っている。というわけでまず最初はデビューアルバムのタイトル曲から。

 何がものすごいのかというと、「理論的に凝っているのに聴きやすい」ところである。大抵の場合、複雑なコード進行を追い求めれば追い求めるほどメロディが聴きにくくなっていくもので、それを克服できる作曲家はほとんどいない。巷のヒット曲はほぼ全てがメロディ優先である。(グッドメロディを作るだけでも十分偉いのだが)
 この曲の場合はオンコードで繋いでゆく流れが綺麗である。そしてサビで出てくるGm7がとても新鮮に響く。しかもメロディはそこでGmの9thに飛翔しているのだ。素晴らしいセンスである。
 1970年代初頭、日本に他にこんな曲調は存在しなかった。荒井氏は学生のうちから輸入レコードを買っていて、この頃は特にイギリスの音楽(Procol Harumあたりか?)が好きだったらしい。そこから技術を学んだにせよ、聴いてすぐ自分のものにしてしまったのだ。

 歌詞もまた凄い。死んでしまったのに、「しあわせ」かもしれないと言っている。空を見ていたから。
 まさに雲のようにフワフワとした世界観である。小さい頃のクラスメイトがモデルらしい。

 1stアルバムでは荒井氏自身が弾くピアノにバンドが音を重ねてゆく形で制作された。このピアノフレーズはデビューまでにじっくり練っていたものと思われる。ただし演奏力としてはやや硬いきらいがあり、次のアルバムでは松任谷正隆氏が弾くこととなる。
 1番と2番でコード進行は勿論同じだが、1番は高音域、2番は低音域でアルペジオを弾いている(狙いはよくわからない)。採譜の時点である程度完全に採ったが、音運びが不自然なところや低音に固まりすぎている所は適当に修正した(1996年のライブCDで微妙に違うピアノ演奏になっているので、変えても問題ないと判断)。それに加え、オルガンの印象的なフレーズを無理矢理合体させている。
 音源は「すずめ」と同じHALionOne Yamaha S90ES。

 このオケには出てこないが書き添えておくと、実は松任谷正隆氏はポピュラーミュージックにストリングスを取り入れたパイオニアで、1973年のこの曲の時点でもう完璧なストリングスが鳴っている。
 あと細野晴臣氏によるベースも素晴らしい。歌に入る直前のトロロロロロローが格好良いが、昔は単に高音の方だと思っていた。しかしよく聴いてみたらこれはオクターブで交互に弾いている気がする。

 しばらく聴かずにいるとバラードのイメージによってもっとテンポが遅い気がしてくるが、実際は結構サクサクと進む感じである。原曲はあちこちで伸び縮みしているので正確なBPMは無いが、このカヴァーではだいたい間を取って85.75でレコーディングした。

 自分で歌うにあたり、最高音(ラスト除く)がAになるKey of Cとした。Aは男性には苦しいが一瞬しか出てこないし、今後弾く事もあるだろうからキリのよいkeyになるに越したことはない。

 余談。以前TVで森山直太朗氏がこの曲をギターで弾き語りしていたが、コード進行が全然違った。Gm7に心酔している人達は一斉に「オイ!」と言ったのでは。彼が聴き取れていない筈はないので、わざとフォーク風の解釈をしたのだと思うが、やっぱり納得いかん。
 
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