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「里園 2002〜2004」解説 【Tets Kosaka】
里園は1st Album「カタルシス」を出した後、3曲入りのSingleを4枚出しました。普通ならそれをまたアルバムにまとめるところですが、妹の引っ越しなどいくつかの要因により、タイミングを失ってしまったのです。 その後、妹がアコギや自らの作曲を始めてアコースティックアルバムを出す事になったりして、打ち込みで作った12曲は置き去りになってしまいました。 この「里園 2002〜2004」はそれを収録した言わば『幻の2nd Album』です。Singleに3曲ずつ入れている時点で起・転・結ぐらいのメリハリは意識していたので、リリースしたままの曲順で並べました。 この時期も全曲、妹が作詞/私が作曲・編曲の担当で固定です。相変わらず生楽器は弾けないのでほぼ全て打ち込み。例外として「魔法を唱えて」のSAXっぽい間奏はタイミングを揺らしたかったので鍵盤での手弾き。「翼」の間奏のギターソロは本物のアコギを弾きました。 音楽理論を勉強し始めたことで、「カタルシス」の頃の曲が理論的に言えばものすごく平凡だったという事に気づいてしまい、悩みました。今ならメロディさえ良ければそれでいいんだと思えるようになりましたが、若かったですし、この時期はどうしてもこだわりを捨てられない状態で四苦八苦しながらの作曲でした。しかしその甲斐あって、とことん煮詰めた結晶のような作品たちが残りました。 機材は「MU100」「SC-88ST」に加え、「魔法を唱えて」の頃から「RS-5」が加わって少しサウンドがリッチに。MacもG3あたりに格上げしていた筈。 この頃の曲も今聴くと低音方向へこもり気味だったので、リマスタリングの際スッキリさせました。 幻の2nd Albumが出せたので、「月は遠く」は『事実上の3rd Album』ということにしてしまいましょう。 【里園】 当時アルバムにならなかったシングル曲たちが、時を経てこうしてひとつにまとめられて聴けるかたちになったということは大変嬉しいことであります。 どの曲にも思い入れがあるし、ひとつひとつにすごく時間をかけていましたねー。 にしても、当時3曲入りシングル出してたんですね。 今思うとすごいな。 2年で4枚発表してたとは…それでこの凝りようですからね。 音楽に費やす時間がそれだけあったんだなーと思うと、あれは二度とない貴重でしあわせな時間だったなと思います。 【曲解説 by Tets Kosaka】 ■きおくどろぼう 『サビで長く音を伸ばして歌い上げるバラード』を作ろう、と初めから決めて作曲。 ダークなコード感に何故か琴・尺八の和風要素をブレンド。各種SEや低音の変な連打など、全体的に何のジャンルでもない謎曲になりました。 ■Survivor:926 ダンス系の曲を目指して作曲。ある程度globeあたりの影響でできています。サビで鳴っているシンセが「Feel Like dance」と同じ譜割りだったり。 でもAメロのベースラインだけはスガシカオ「夜明けまえ」を援用。 ■逃避夢 -トウヒ・ユメ- 8beatバラード。作った時自分で良いのか悪いのかよく判断がつきませんでした。未だについていませんが……。 サウンドはファンシーな感じといいますか。Bメロとサビがすごく変な中低音のベースラインです。当時は平凡なアレンジがよっぽど嫌だったのでしょう。 ■Pleiades sky 臆面もなく申せば、できた時「自分は天才だ」と初めて思いました。複雑なコード進行とポップなメロディを両立できたからです。プロの曲でさえこういう方向性で感心できるようなものには出会っていませんし、私自身もこれほどの曲は他に作れていません。 アレンジのほうは無難なところに置きにいっているかもしれませんね。キラキラ音は歌詞に触発されてのものでしょう。 Single収録の音源には心残りがあったため、今回は別バージョンのカラオケと元のヴォーカルをRemixしています。 ■盲目少女 明らかに椎名林檎「歌舞伎町の女王」の影響ですねこれは。 メロディラインは似ていませんが、スネア4つ打ちとか半音下降進行とかベース動きまくりとか。 ■森が唄う日 - forget me not - 自分の曲の中で最もコード進行が目茶苦茶な動きをしている作品。さすがにこれだけやらかすとメロディも若干ヘンです。 ■魔法を唱えて 当時はmisia「Everything」が出ていて、ジャズ系の知識をポップスの上にちょっとだけ振り掛けるという手法があるのだなと学習し、この曲ができました。 ■かごめかごめ スガシカオ氏の曲を研究し、コード進行をかなり参考に。 Aメロはブルースコード1発のみで押し、サビで同主調転調するというものです。でもメロディは女性用にしたつもり。 ファンクなのに琴や三味線で味付けしています。 ■秘密 HipHopビートに乗った女性用メロディ。ピアノも、わざとloopっぽい扱い。 転調しない代わりにテンション音をたくさん足しています。 やや宇多田ヒカルの影響があるかな? ■翼 冒頭のシャラララシャラララは、元は『風車』のイメージでした。当時風力発電の関係者と話す機会があったので。 奥に引っ込んだようなスネアはGARNET CROW「flying」の影響ですね。 ■ブラック・ホール - 黒い穴 - 特殊なコード進行でどこまで聴きやすくするか、というこれも挑戦。エキゾチックな感じになりました。テンションを計算して作った間奏のオルガンがたまりません。 アレンジ的には「硝子人形」以来のレゲエ系エレピが中心。 アクセントに半音移動のシンセを使ったのは、BETCHIN'「Tender Angel」あたりから。 ■Slavery 山下達郎「DANCER」の薄暗〜い響きを援用。全編を貫くシンコペーションといい、結構あからさまに似てますね……。 ドラムパターンは沼澤尚さんのイメージで作り込みました。(大した出来ではありませんが。) ブラス隊は音色がなかなかイメージに合わず、管楽器単体を大量に重ねた覚えがあります。 【曲解説 by 里園】 ■きおくどろぼう この曲を聴くと小学校6年生のときの担任の先生を思い出します。 当時言われた言葉がなにかに触発されたのか…なにせもう記憶があいまいで(きおくどろぼうが ■Survivor:926 926は誕生日で、生存ナンバーと見立てて「ヒトであってヒトでない無機質なるモノ」のイメージ…だった気がします 死にたい、と生きたい、 進みたい、とここにいたい、 手に入れたい、となにもいらない、 そういうもののはざま、どこでもない場所でもがき苦しむような時期でした。 ■逃避夢 -トウヒ・ユメ- 明るい曲調に暗い歌詞をのせたい、という、えんどれすに近い雰囲気で、且つ、これこれこういう曲調にしてくれ!と兄にかなり要求をした曲だった気がします。 そういえば珍しく詞先ではなかったかな。 最後に転調するのもわたしの希望だった気がします。 ■Pleiades sky わたしの中では里園を代表する一曲と言ってもいいかと。 今はなき、ヤマハティーンズミュージックフェスティバルで東北大会まで行かせて頂いた曲です。 ■盲目少女 「あたし」…いまなら絶対使わないことばですがね… なにも見えてない少女であり、なにも見ようとしない少女=盲目少女、て感じでしょうか。 秋田市に住んでた頃、夜道をひとりで歩くのが怖くて怖くてもう。 特に地下道なんてたまらんかったですよね(なんの話 …っていうところから膨らませました。 ■森が唄う日 - forget me not - ファンタジーな世界観ですねぇ。 勿忘草にまつわる伝説をたまたま辞書でみて膨らませました。 森の中にいるかのような爽やかでファンシーな音に和みます。 ■魔法を唱えて これは後々になっても弾き語りでうたう機会の多かった一曲 メロディラインとフェイクの感じ、コードの感じがちょっと変わってるのが気に入ってますね。 ■かごめかごめ 童謡はほんとは恐ろしいものなんだと知って、ただ遊んでるだけにみえていた子どもたちが、実はとても恐ろしいことをやっていたら?…という妄想からです。 わざと子どもっぽく平仮名多めの歌詞にしたんだと思います。 ■秘密 韻を踏もうと頑張ってる感がすごすぎてなんか恥ずかしいです。 誰しも抱えているそれぞれの秘密。どこまで抱えて、どこまで見せるかもまたひとそれぞれですね。 出だしのピアノからコーラスからすごく気に入ってる一曲でしたが、あまり人前で歌う機会はなかったですねぇ。 ■翼 里園第二期のなかでわたしの中でいちばんはこの曲。 なにしろ出だしのシャラララシャラララ〜を聴かされたときにはキタコレ!!と胸が震えましたよね(? 青空と、爽やかにまわる白い風車の画が浮かんできますね。 ミディアムテンポだけどノリもあって歌いやすいし、この時期のじぶんの声が生かされてるなと感じます。 コーラスもいろいろ注文言って凝ってもらいました。 歌詞はモロに当時の失恋を歌ってますね。 里園初期は全体的に、あからさまな恋愛の歌詞が少なかったと思いますが、オトナになってきたんですね(? ■ブラック・ホール - 黒い穴 - 得意の社会派歌詞。 イメージは星新一さんのショートショートから。 これ、生で歌うとけっこう楽しいんです。 ■Slavery これは悩んだ…とにかくタイトルが決められなかったなー。 びっくりするほど思い入れのない歌詞で…。 |