キリンジ「エイリアンズ」


キリンジ「エイリアンズ」

■キリンジ■
1998年メジャーデビュー。当初は堀込高樹、堀込泰行の兄弟で結成。
(2013年に弟の堀込泰行が脱退、兄の堀込高樹+5人の新メンバーで「キリンジ」の名前で継続することとなった)
2人共がそれぞれ作詞作曲することができる。初期からプロデュースを手掛けた冨田恵一の力とも見事な化学反応を見せ、高い音楽性が評価されてきた。
(ヴォーカルも2人とも取れるが、兄が書いた曲であっても弟が歌う比率がかなり高い)
2大名曲として弟の「エイリアンズ」、兄の「Drifter」があるが、最初に筆者が歌ってみたいと思ったのがエイリアンズだった。

この歌詞は舞台として「都市ではないどこか」(=『僻地』)を描いている。うちの田舎町にもありますよ、『公団』『バイパス』、そして音も届かないほど上空を通り過ぎる飛行機(小さな空港ができる前から)。

でも登場人物は自らを平均的な人間だとは思っていなくて、『エイリアンズ』……この世界に自分が存在することが不自然な気持ちを持っている。男と女は一緒にいるけれど、その間にさえ乖離はある。それでも、異端者同士寄り添わずにはいられない。なんとかその場所へ『魔法』をかけようとしている。

楽曲であるが、まずはコード進行の複雑さが耳につく。しかし複雑なのは歌のない「つなぎ」の部分が多い。想像であるが、作られた当初はもっとシンプルな進行だったのではないだろうか? それに冨田恵一氏が改造を施した、というのがいかにもありそうに思える。(冨田氏プロデュースのMisia「Everything」なんかは明らかに後付けの飾りコードだらけだ)
もちろん堀込泰行氏自身の音楽性も高く、コードに対するメロディの当て方がテンション中心でセンスが良い。
Bメロの「月明かりが」の「が」の落ち方なんか最高である。

ファルセットの最高音でc♯が出る人なら、キーはF♯。ギターだとCを6カポで弾くか、適度に出るところまで下げる。(有名な秦基博氏のカバーは4カポにあたる)
女性は地声で歌うならそのまま、ファルセットを使うならGに移調したほうがよいかもしれない。

イントロのギターメロディが素晴らしい。面白い動きをしてテンション(E-9)に行ったりしつつも抒情的である。
経過音として普通のEとE+5の違いは明確に出したい。Eaugでもよい。
行の最後のツナギにドミナント代理としてB♭をもってくる技はスガシカオ氏もよく使っている。(時代的には同時期か?)

AメロでEm7からDm7へ半音で繋ぐところはE♭になっている。最も定番なのはE♭m7だが、少しだけアクが強いE♭がここではマッチしているのだろう。

Bメロは2-5-3-6の変形だが、Gm7は一時転調でFへ行ってIIm→IIIの進行。メロディのb音とコードトーンのb♭がぶつかるが、Aを先取りした9thであるからか、不自然さは感じない。
F♯Φ→B7ではさらにGへ転調し、E♭dim(B7-9の代理とも半音下降とも取れる)を経由してkey of Cへ戻ってくる。

サビは4-5-3-6系であるが、ダイアトニックコードBmΦでII-Vに行きがちなところを、key of Gからの借用Bm7で少しクセを出している。歌詞の不穏さと相まって効果的。

間奏はBメロのメロディを引用しつつも別のコードを当て、イントロと同じフレーズが出現し、3回目のBメロへ繋ぐ。
そこではメロディが大きく上昇し、サビ前に余分に2拍のタメが入る。

最後は同じメロディに違うコードを当てて、間奏で1度使ったフレーズももう一度使いつつコードを変え(G7を、G9の代理BΦに変える)、不安定なEm7で終止する。

[X=4拍]
Original Key:F♯/Sheet:C/Hi:g[fal]

【I】
F△7 E+5→E(7) Am9 D7 13 | F△9 C/E→E+5 Am9 Am9→B♭9

【A】【A’】
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Am9 Am9→B♭9
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Em7/A →A7

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7 Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
F△9 F△9 C△7 C△7

【A’】
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Em7/A →A9

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7(+9) Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
F△9 F△9 C△9 C△9

【K】
F△9 F△9 C△9 Bm7 →E(7)
F△9 E+5→E(7) Am9 D7 13 | F△9 E+5(7) Em7/A →A7

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7(+9) Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7) →(2拍ブレイク)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
Am7 →C7 F△9 →D/E ~E+5
Dm9 E+5(7) Am9 Am9…

【O】
Dm7 Fm →BΦ Em7…

山下達郎「あまく危険な香り」


山下達郎「あまく危険な香り」

1982年、シングルで発表。TBS系ドラマに使用されたらしい。
レーベル移籍時期のハザマにリリースした関係で、当時オリジナルアルバムには収録する機会がなかった。現在は「For You」リマスター版のボーナストラックもしくはベスト盤系で聴ける。

複雑なコード進行を持つため、市販の楽譜やネットの情報は他の曲以上に信用ならない。特に自分の耳で確かめておきたかった曲。

Curtis Mayfield「TRIPPING OUT」(1980年リリース)とアレンジがそっくりだと発見されたが、達郎氏本人はまったくの偶然であるとコメントしている。

まずイントロの進行が興味深い。明らかにノンダイアトニックな組み合わせのE△7とC△7を繰り返す。これはKey of Eで始まり、モーダルインターチェンジでKey of Gに一時転調したIV度としてのC△7と解釈すべきなのだろう。

その後Em7/Aへ移行するが、これはほぼAm11の役割を果たしているので、Key of Gをそのまま続けたII度マイナーということでいいだろう。
そして歌のアタマはトニックGのmaj7で始まる。

ハーフディミニッシュF♯m7-5からマイナーのドミナントB7へ進行するのはジャズでよくある手。その後Aへ行くのはセカンダリードミナント(Key of D)と、一時転調をクルクルと繰り出している。

Bメロに入ると今度は4度転調してKey of Cのツーファイブ(の代理)、すぐKey of Gに戻ってきたかと思えばイントロで伏線を張っていたKey of Eへ。

そして次のメロディ(短いサビ?)はKey of GのIIIm→IImという終止感の少ない不安定な進行の上で展開される。

一般のわかりやすい曲は4小節区切りで展開するが、この曲は6小節だったり5小節だったりと半端な構成である。それでも不自然には感じない。

そのように色々なワザを駆使して作られた曲は、『大人の味』が出たものとなった。

レコーディングバージョンはフェイドアウトだが、LIVEアルバム「JOY」に収録されているものはSAXソロののち、ちゃんとエンディングをつけている。ラスト手前のB/G♯はいわゆる「裏コード」(D7に対するG♯7)に近い(B/G♯は合体するとG♯m7になる)発想と思われる。

[X=4拍]
Original Key:A♭/Sheet:G/Hi:g

【I】
E△7 C△9 E△7 C△9 | E△7 C△9 Em7/A D4a9→D(13)

【A】
G△7 F♯Φ→B7-9 Bm7/E→Em7
A74→A7 C△7/D→D7(13)

G△7 F♯Φ→B7-9 Em7(9 11)
A74→A7 C△7/D→D7(13) G△7(9)

【B】
Dm9→F△7/G C△9 F♯Φ→D7/B | E△7 C△9 E△7 C△9

【C】
Bm7 Am7 Bm7 Am7 Am7/D→D

【A】
G△7 F♯Φ→B7-9 Bm7/E→Em7
A74→A7 Am7/D Am7/D

【K】
G△7 BΦ→B7-9 Bm7/E→Em7 A74→A7 C△7/D→D7(13) G△7(9)

【B】
Dm9→F△7/G C△9 F♯Φ→D7/B | E△7 C△9 E△7 C△9

【C】
Bm7 Am7 Bm7 Am7 Am7/D→D

【A】
G△7 F♯Φ→B7-9 Bm7/E→Em7
A74→A7 C△7/D B47

【O】
E△7 C△9 E△7 C△9 (繰り返し)

→Am7… D7… B/G♯… | G△9

荒井由実「卒業写真」


荒井由実「卒業写真」

世に先に出たのは1975年、ハイ・ファイ・セットのシングルとして。その後荒井由実本人のバージョンは同年中にアルバムへ収録された。
私はハイ・ファイ・セットのバージョンは所有していないので、荒井由実バージョンを参考とした。

歌唱法として、同時期の他の曲と違って妙にかわいらしい声質で歌っている気がする。

歌詞は普通に聴くと同級生の異性かな? と思うが、同性の教師だという説もあるらしい。「叱って」だからそうなのかも? でも「青春そのもの」とまで思い入れるのなら、聴き手は異性と解釈しておきたいよね。

荒井由実の1枚目から3枚目のアルバムまでは、基本的に細野晴臣・鈴木茂・林立夫・松任谷正隆の陣容で演奏されていて、これが素晴らしい。とにかく聴き入ってしまう。(4枚目が悪いわけではないが)
アレンジャーが全て決め込むのではなく、基本的なコード譜を元にミュージシャン達が「それぞれ好き勝手に」弾いていたらしいが、それでもまとまってしまうのは、全員の音楽性が異常に高かったからに他ならない。

「卒業写真」に関して特筆すべきは、「歌はハネていないのに演奏はハネている」こと。でも全く不自然にならないのはこれも、全員のタイム感の為せる業である。アマチュアがやるとおそらくどちらかに偏ってしまう。

好き勝手アレンジのため、テンションは場所によって入ったり入ってなかったりとまちまちである。一応書き分けておいたが、カバー弾き語りでそこまで再現する必要はなく、同じメロの部分は自分なりに統一したほうがよいだろう。

ド頭だけ、叙情的なエレピが鳴る。Dmの9th音から順にズラして弾かれている(クラシックではアルペッジョという奏法らしい。ギターのアルペジオとは違う)。歌部分に入ると、9thは出てこず(間奏では一瞬使われている)、Dm7である。この邪魔をしないようにする抑制が見事。

F/GもG/Fも登場するが、重要な響きなのでなるべく再現したい。

おや? と思うのはC7のところでベースがスライドして上がっていき、E音とB♭音が聴こえること。片方がエレピである可能性もあるが、もしかしたらベース1人で和音弾きをしているのかもしれない。次のFに繋がる音としてはどちらもルートCより面白く、アリである。

また、終盤のサビの最中に2回ほど、ベースの音質で高いC音と低いA音がかぶって聴こえるが……これはもしかしてHi Cを押さえながら3弦開放を弾いているのだろうか。そうだとしたらちょっと天才的に過ぎる。

サビ前だけは「C7禁止」にしているのも興味深い。歌詞の内容も鑑みて、妙に暖かみが出てしまうのを避けたのだろうか。

後半うっすらとブラス隊の音が聴こえるが、決して目立つほど音量を出していない。贅沢である。松任谷正隆氏お得意のストリングスも入っている。

歌のラストの演奏隊が何故かシンコペーション乱れ打ちである。これは昔は全然気付かなかったな。

[X=2拍]
Original Key:C/Hi:a

【I】
Dm9 G C(13) Am7 | Dm9 G C C7

【A】
F F(13)/G C(13) C△7(13) | Am(7) D G G
Dm7 G Am Am | Dm G C C7(/E)

【A】
F F/G C△7(13) C△7(13) | Am D7 G G
Dm7 G Am Am | Dm7 G C C

【C】
F G7/F Em Am7 | F G7/F Em7 Am7
Dm G C△9 Am(7) | Dm G C C7(/E)

【K】
F G(7) C(△7) C(△9) | Am D(9) G G
Dm(9) G7 Am7 Am7 | Dm7 G C C7(/E)

【A】
F F/G C(13) C(13) | Am D7 G G
Dm7 G Am Am | Dm G C C

【C】
F G/F Em Am7 | F G/F Em7 Am
Dm G7 C△7 Am(7) | Dm7 G C C

【C】
F G/F Em7 Am7 | F G/F Em7 Am7
Dm G C Am | Dm7 G7 C⌒Am
Dm7⌒G7 C⌒Am7 | Dm7⌒G7 C⌒Am

【O】
Dm7(9) G C Am | Dm G7 C Am >

中島みゆき「最後の女神」


中島みゆき「最後の女神」1993年、シングル(両A面の2曲目)としてリリース。
それほどヒットしたわけではないが、1993年10月から1994年3月までTBSの夜中のニュース番組に使われたため、一部の人々には何度も耳に入っているかもしれない。

ニュース番組に使われるという事で、「明るくも暗くもない曲」を目指したという。
歌詞の内容は抽象的で、正直言ってどういうシチュエーションなのか私にはよくわからない。
しかし良い曲だなぁと昔聴いた時から思っており、選定してみた。

ビート感としては「ズンズンズンズン」という重みのある8ビートである。

1番はダイアトニックコードで進むが、間奏で転調(C→E♭)する。その後2番のアタマでは元に戻るのだが、このE♭への「転調感」はその後のDメロと最後のサビでの転調をスムースに聴かせるための伏線になっている。

DメロでE♭になったあと、イントロと同じように静か目にKey of Cのメロに戻り、もう一度E♭にジャンプアップして最後のサビへ。
そこでは、+3という大幅なアップで元のサビと同じ旋律を歌う。これは中々珍しい。(他には、スキマスイッチの「奏」くらいか)

元々のA→B→Cメロでは、最高音がBメロ部分にあり(d音)、サビはやや低い。そのため、+3にジャンプしても元のBメロの最高音を超えない(c音)ところも面白い。(こういう構造を持った曲は他にラルクの「STAY AWAY」くらいか)
カバーする場合はd音のほうを基準に考えよう。筆者は歌うときKey of F(最高音g)としたが、男性でもっと出る人もいるだろう。

どのKeyを基準にしても♭、♯がつく事が避けられないため、ギターでは少々苦労するかもしれない。鍵盤の場合は半音転調よりは遥かに楽である。

[X=2拍]
Original Key:A→C/Sheet:C→E♭/Hi:d

【I】
Ca9 Ca9 Em7/B Em7/B

【E静】
Ca9 Ca9 Em7/B Em7/B Am7 Em7 Fa9 Fa9→Fa9/E
Dm7 E7 Am F C/G G Ca9 Ca9

【A】
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11 Dm11/G
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11→Dm11/G C→C-C/B

【B】
Am7 Em7 F(a9) C(a9)→C-C/B
Am7 Em7 Dm11 Dm11/G→G

【C】
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11 Dm11/G→G
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11/G→G C

【K】
E♭ B♭ Fm7 Cm7 | A♭ E♭/G Fm11 G
E♭ B♭ G7 Cm | A♭ E♭/G Fm11 Dm/G→G

【A】
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11→Dm11/G C→C-C/B

【B】
Am7 Em7 F(a9) C(a9)→C-C/B
Am7 Em7 Dm11 Dm11/G→G

【C】
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11 Dm11/G→G
C(a9) Em(7) F(a9) C(a9)→C(a9)/B
Am7 Em7 Dm11/G→G C

【D】
E♭ B♭ G7 Cm | A♭ E♭/G Fm7 Dm/G→G

【E静】
Ca9 Ca9 Em7/B Em7/B
Am7 Em7 Fa9 Fa9→Fa9/E
Dm7 E7 Am→Am/A♭ Am7/G→Am/F♯
C/G G7 G7 G7

【転調C】
E♭(a9) Gm(7) A♭(a9) E♭(a9)→E♭(a9)/D
Cm7 Gm7 Fm11 Fm11/B♭→B♭
E♭(a9) Gm(7) A♭(a9) E♭(a9)→E♭(a9)/D
Cm7 Gm7 Fm11 Fm11/B♭→B♭
…E♭(a9) Gm(7) A♭(a9) E♭(a9)→E♭(a9)/D
Cm7 Gm7 Fm11 Fm11/B♭→B♭
E♭(a9) Gm(7) A♭(a9) E♭(a9)→E♭(a9)/D
Cm7 Gm7 Fm11 Fm11/B♭→B♭
(以下リフレイン)

Daft Punk「Get Lucky」


Daft Punk「Get Lucky」2013年、アルバム「Random Access Memories」からの先行シングルとしてリリース。

Chicのナイル・ロジャースは70年代の成功の後も、プロデュース業(ギターが関係ないデジタルなものまで)で成功、ずっと現役の音楽人として活動を続けていた。

そこへDaft Punkは新作に参加して欲しいというオファーを出す。歳の差は20以上。きっと若いころChicを聴いて、「憧れの人」だったのだろう。

そもそもDaft Punkはデビュー時から「テクノロジーの使い手」というイメージでやってきた。シンセ、サンプリングやヴォコーダーを駆使して斬新な音を作り上げる。ただその中に、確かにFunkyなテイストは忍ばされていた。

その彼らが2013年に発表したアルバムは、世界的なEDM(Electronic Dance Music)ブームが起こりつつある中で、意外なテイストを持ったものであった。生音中心のレコーディングで、70年代回帰風のサウンドだったのだ。

そのコンセプトにナイル・ロジャースのギターカッティングが冴え渡り、新作はカッコ良くFunkyに仕上がった。

ヴォーカルにフィーチャリングされているのはファレル・ウィリアムス。The Neptunesの片方として90年代から2000年代にかけてHipHopのトップトラックメイカーであったが、徐々にヴォーカル業にシフトしてきた人である。(最初にHipHopに歌を入れた時は「ヘタウマ」なんて言われたりしていたが)

コード進行は4つのコードをひたすら繰り返すのみ。その上にAメロ、Bメロ、Cメロとメロディーが展開してゆく。

Am C Em7 D。一聴して、マイナーのトニックから入っているように感じるため、KeyがAmで、Em7までがダイアトニックコードで、Dがセカンダリードミナントに見える。
しかし、メロディはEmのスケールで成り立っているので、Key of Em(G)のIIm→IV→VIm7→Vが本当の正体。これが、あたかも2小節ごとに転調しているように錯覚させる。
それによって、Em7が鳴った瞬間、なんとも言えない切ない響きが沸き起こるのだ。たった4つのコードなのに、これほど斬新に聴かせるとは凄い。

“We’re up all night get lucky”が最後にひたすら繰り返される歌詞は、『終わらない夜、終わらずに踊り続けたい夜』を上手く表現していると思う。

カバーするにあたっては、ファルセットを使うかどうかで違ってくる。使える男性はOriginal Keyでよいだろうが、苦手な方はだいぶ下げないといけないだろう。

終盤、ヴォコーダーによってWe’re up all night get…と歌われる箇所がある。弾き語りの場合ここは普通に歌うとつまらないので、オクターブ下とか、Rap風に処理するのもいいかもしれない。

[X=4拍]
Original Key:F♯m/Sheet:Em/Hi:e,b

【繰り返しパターン】
Am C Em7 D

Chic「Le Freak」


Chic「Le Freak」1978年、アルバム「C’est Chic」収録、及びシングルカット。Chic(シック)の代表曲。

“Le”はフランス語読みで「ル」。“Freak”は色々な意味があるのだが、ここでは「熱狂」あたりが適当であろうか。
サビで続く“C’est Chic”という言葉もフランス語であり、英語でいう「This is Chic」だそう。

邦題「おしゃれフリーク」として当時の日本でもディスコで受け入れられた。まあちょっとヘンな邦題ではある。フランス語が入ってるからおしゃれなのか?

ChicはギターのNile RodgersとベースのBernard Edwardsを中心としたグループである。(他のメンバーは色々入れ替わっていた模様)
Nile Rodgersのギターカッティングはリズムを刻みながらも和音が動くという特徴的なもの。
このLe Freakでもそれがいかんなく発揮されている。KeyはAmなのだが、5フレット付近のEmの形を起点として指を組み換え、格好いいフレーズを作っている。正確な弾き方を知りたいかたはYouTubeを漁ってみよう。

私は1人きりの弾き語りなので、簡略化したローコードでゴリゴリやるしかない。
コード進行は基本的に、たった1種類を延々と繰り返すのみ。
原曲は女性ヴォーカルでAmだが、私は男声なのでF#mでPlayした。ただ原曲もそれほど高くないので、男性でも声が高い人はAmでできるかもしれない。もちろんGmなりG♯mなり、ちょうど良いところは色々あるだろう。

シングルバージョンでは途中で切り上げられているが、アルバムバージョンは終盤の間奏でストリングスが入って響きが変わる。弾き語りでは省略してもよいと思うが、一応コードを掲載しておく。

こぼれ話:Chicの2人が最初にこの曲を思いついた時の歌詞は、「Aaahh, Fxxk Oxx!」という野卑たものだったらしい。

[X=4拍]
Original Key:Am/Sheet:Em/Hi:e

【繰り返しパターン】
Em(7) A→A9/G

【終盤の間奏】
Em/G Em/G A/G A/G | Em7/G Em7/G A/G A/G
Em/G Em/G Em11/G Em11/G | Em/G Em/G A/G A/G
Em7/G Em7/G A/G A/G | Em7/G Em7/G Em11/G Em11/G
Em/G Em/G A A | Em7/G Em7/G A A

The Beatles「Something」


ジョージ特集をやったので、またジョージ作品。
1969年、アルバム「Abbey Road」収録曲としてリリース。
Beatles作品の中でも「Yesterday」に次いでカバーが多いという人気バラード。

良いリードギターである。こちらはちゃんとジョージが弾いている。

半音下降を使ったコード進行であるが、ベースが5度に行ったりしているのが面白い。
「~Gently Weeps」同様に、サビでAに転調している。せっかく盛り上がるのに1回きりしかやらないところが奥ゆかしいですな。

A→A/G♯→A/G→A/F♯-A/F-A/EとC→C/B→C/A→C/G-C/E-C/Dのところは、16分音符で3-3-3-3-2-2と弾いて、4拍に収める。

アコギでやる場合はE♭が難関になる。セーハ4フレットか6フレットで弾くしかないので急に飛ばなければならない。

[X=2拍]
Original Key:C/Hi:g

【I】
… F E♭→G/D

【A】
C C C△7/G C△7/G C7 C7 F F→F/E
D D G→G49/A G7/B

【B】
Am Am△7/E Am7/G D9 | F E♭→G/D

【A】
C C C△7/G C△7/G C7 C7 F F→F/E
D D G→G49/A G7/B

【B】
Am Am△7/E Am7/G D9 | F E♭→G/D | A A |

【C】
A C♯m/G♯ F♯m7 A/E
D G    A→A/G♯→A/G→A/F♯-A/F-A/E
A C♯m/G♯ F♯m7 A/E
D G    C→C/B→C/A→C/G-C/E-C/D

【K】
C C C△7/G C△7/G C7 C7 F F→F/E
D D G→G49/A G7/B
Am Am△7/E Am7/G D9 | F E♭→G/D

【A】
C C C△7/G C△7/G C7 C7 F F→F/E
D D G→G49/A G7/B

【B】
Am Am△7/E Am7/G D9 | F E♭→G/D | A A |

【O】
F E♭→G/D C…

The Beatles「Here Comes The sun」


The Beatles「Here Comes The sun」
1969年、アルバム「Abbey Road」収録曲としてリリース。

某スーパーでよくBGMとしてインストがかかっているので、行くたび頭の中でグルグル再生される。

Original KeyはAよりほんの少し音程が高い。普通のチューニングでレコーディングした後、マスターテープをちょっと早く回して商品にするとこうなる。テンポ感が物足りなかったのだろうか? Beatles初期ではよくあったのだが、後期では珍しい。

Beatlesコピーで有名なチャック近藤氏が、この曲は7フレットカポでDの形を使っているという。解散後のジョージ本人のLIVE映像が存在するので確認すると、確かに7カポで原曲の印象的なフレーズを弾いていた。
7カポもするとキンキンと高い音しか出ないので、フレーズにこだわらないならば、1人きりで弾き語る時は低音を補う事も考えてGの2カポが無難ではないだろうか。

ヴォーカルは【A】では地声のb、【D】では裏声のb♭が最高音となる。
裏声を使う場合2カポでhi cになるので男声だとギリギリだが、原曲にこだわらず【D】で地声を使うのならば、もっと上げても全く問題ない。極端な話、key of D♯(+8)でも最高音gなので歌えてしまう。が、低音で歌ってこその温かさというものもあるので、お好みで選択していいだろう。
私自身は、間をとって5カポ(最高音e)を選択した。

【A】の最後は8分音符で3→3→3→3-2-2という譜割りだが変拍子ではない。しかし【D】は本物の変拍子である。直前の【K2】のDを7拍で切り上げた後、3→3→3-2~8(1小節)~7という組み合わせを繰り返す。前半が11拍で半端になっているし、シメも7拍で切り上げ。だがメロディーとぴったり連動しているので、聴いて覚えるのはそれほど難しくないはず。

ラスト【O】は3→3→3-2という拍で弾いてGを伸ばしてフィニッシュ。

[X=4拍]
Original Key:A+/Sheet:G/Hi:b↓,b♭↑(fal)

【I】
G G C D | G G C D

【C】
G G C A | G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4

【A】
G G C D | G G C D
【C】
G G C A7 | G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4

【K】
G D

【A】
G G C D | G G C D
【C】
G G C A7 | G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4

【K2】
G D. .

【D】
B♭→F→C-C G D. . | B♭→F→C-C G D. .
B♭→F→C-C G D. . | B♭→F→C-C G D. .
B♭→F→C-C G D. . | B♭→F→C-C G D D4 D D7

【A】
G G C D | G G C D
【C】
G G C A7 | G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4
【C】
G G C A7 | G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4
G C6→Ga9/B→Am7→D4/G-D4-D4

【O】
B♭→F→C-C G

The Beatles「While My Guitar Gently Weeps」


1968年、アルバム「The Beatles」(通称ホワイト・アルバム)収録曲としてリリース。
カッコよく哀愁もある曲。

ジョージ・ハリスンによる作品。
今ではエリック・クラプトンがリードギターを弾いている曲として有名だが、当時はレコードに一切名前も載っていなかったらしい。
また、音色としてもクラプトンが当時活躍していたCreamとは違い、「まるでジョージがすごく上手く弾いたような」感じを出している。この、我を抑え楽曲の完成度を優先した態度は素晴らしい。

クラプトン自身はこの曲のポールを褒めていたという。このベースは音符的には動きまわる感じではないが、音色のゴツさでこの曲の小節アタマに「ゴン・ゴン」とくる独特のノリを支配し、音の移動でもうまく流れを作っている。

その独特のノリのため、アコギ1本でやる時ストロークをどうすべきか難しいところはある。

キーはファルセットが出る前提ならそれほど高くない。原曲Amだが、Bmでもいけるだろう。
私が最初に人前で弾いた時は飛び込みでエレキと共演だったので、弾きやすいようオリジナルキーにしておいた。それとカホンも加わり、途中で「テンポ早まってるな……」と気づいたが修正できなかった。次回から気をつけよう。

【A】パートではAメジャーへ転調し、少々バレーコードが連続する。

ラストの「weeps」は3段階に渡ってやたらと高い音へ移動するので注意。(カバーの際、省略しても構わないとは思うが)

[X=1小節]
Original Key:Am/Hi:g♯(fal)

【I】
Am Am7/G D7/F♯ F△7
Am  G  D  E

【C】
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   D   E
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   C   E

【A】
A  Cm♯(7)  F♯m   C♯m(7)
Bm  Bm    E→E/F♯ E/G♯→E/A-E/B
A  Cm♯(7)  F♯m   C♯m(7)
Bm  Bm    E→E/F♯ E/G♯→E/A-E/B

【C】
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   D   E
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   C   E

【K】
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   D   E
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   C   E

【A】
A  Cm♯(7)  F♯m   C♯m(7)
Bm  Bm    E→E/F♯ E/G♯→E/A-E/B
A  Cm♯(7)  F♯m   C♯m(7)
Bm  Bm    E→E/F♯ E/G♯→E/A-E/B

【C】
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   D   E
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   C   E

【O】
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   D   E
Am Am7/G D7/F♯  F△7
Am  G   C   E

…(fade out)