キリンジ「エイリアンズ」


キリンジ「エイリアンズ」

■キリンジ■
1998年メジャーデビュー。当初は堀込高樹、堀込泰行の兄弟で結成。
(2013年に弟の堀込泰行が脱退、兄の堀込高樹+5人の新メンバーで「キリンジ」の名前で継続することとなった)
2人共がそれぞれ作詞作曲することができる。初期からプロデュースを手掛けた冨田恵一の力とも見事な化学反応を見せ、高い音楽性が評価されてきた。
(ヴォーカルも2人とも取れるが、兄が書いた曲であっても弟が歌う比率がかなり高い)
2大名曲として弟の「エイリアンズ」、兄の「Drifter」があるが、最初に筆者が歌ってみたいと思ったのがエイリアンズだった。

この歌詞は舞台として「都市ではないどこか」(=『僻地』)を描いている。うちの田舎町にもありますよ、『公団』『バイパス』、そして音も届かないほど上空を通り過ぎる飛行機(小さな空港ができる前から)。

でも登場人物は自らを平均的な人間だとは思っていなくて、『エイリアンズ』……この世界に自分が存在することが不自然な気持ちを持っている。男と女は一緒にいるけれど、その間にさえ乖離はある。それでも、異端者同士寄り添わずにはいられない。なんとかその場所へ『魔法』をかけようとしている。

楽曲であるが、まずはコード進行の複雑さが耳につく。しかし複雑なのは歌のない「つなぎ」の部分が多い。想像であるが、作られた当初はもっとシンプルな進行だったのではないだろうか? それに冨田恵一氏が改造を施した、というのがいかにもありそうに思える。(冨田氏プロデュースのMisia「Everything」なんかは明らかに後付けの飾りコードだらけだ)
もちろん堀込泰行氏自身の音楽性も高く、コードに対するメロディの当て方がテンション中心でセンスが良い。
Bメロの「月明かりが」の「が」の落ち方なんか最高である。

ファルセットの最高音でc♯が出る人なら、キーはF♯。ギターだとCを6カポで弾くか、適度に出るところまで下げる。(有名な秦基博氏のカバーは4カポにあたる)
女性は地声で歌うならそのまま、ファルセットを使うならGに移調したほうがよいかもしれない。

イントロのギターメロディが素晴らしい。面白い動きをしてテンション(E-9)に行ったりしつつも抒情的である。
経過音として普通のEとE+5の違いは明確に出したい。Eaugでもよい。
行の最後のツナギにドミナント代理としてB♭をもってくる技はスガシカオ氏もよく使っている。(時代的には同時期か?)

AメロでEm7からDm7へ半音で繋ぐところはE♭になっている。最も定番なのはE♭m7だが、少しだけアクが強いE♭がここではマッチしているのだろう。

Bメロは2-5-3-6の変形だが、Gm7は一時転調でFへ行ってIIm→IIIの進行。メロディのb音とコードトーンのb♭がぶつかるが、Aを先取りした9thであるからか、不自然さは感じない。
F♯Φ→B7ではさらにGへ転調し、E♭dim(B7-9の代理とも半音下降とも取れる)を経由してkey of Cへ戻ってくる。

サビは4-5-3-6系であるが、ダイアトニックコードBmΦでII-Vに行きがちなところを、key of Gからの借用Bm7で少しクセを出している。歌詞の不穏さと相まって効果的。

間奏はBメロのメロディを引用しつつも別のコードを当て、イントロと同じフレーズが出現し、3回目のBメロへ繋ぐ。
そこではメロディが大きく上昇し、サビ前に余分に2拍のタメが入る。

最後は同じメロディに違うコードを当てて、間奏で1度使ったフレーズももう一度使いつつコードを変え(G7を、G9の代理BΦに変える)、不安定なEm7で終止する。

[X=4拍]
Original Key:F♯/Sheet:C/Hi:g[fal]

【I】
F△7 E+5→E(7) Am9 D7 13 | F△9 C/E→E+5 Am9 Am9→B♭9

【A】【A’】
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Am9 Am9→B♭9
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Em7/A →A7

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7 Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
F△9 F△9 C△7 C△7

【A’】
Am7 Dm7→Em7 Am7 ~C7/G ⌒F△9
(F△9)→Em(7) ~E♭ Dm7 Em7→E+5 Em7/A →A9

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7(+9) Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
F△9 F△9 C△9 C△9

【K】
F△9 F△9 C△9 Bm7 →E(7)
F△9 E+5→E(7) Am9 D7 13 | F△9 E+5(7) Em7/A →A7

【B】
Dm7 Fm6→G7 Em7 Gm7 →A49 ~A9
F♯Φ B7(+9) Em7 →E♭dim Dm7 →E+5(7) →(2拍ブレイク)

【C】
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm7 E+5 →E7 Am9 C7
F△7(9) G/F Em7 Am7 | Bm9(11) E+5
Am7 →C7 F△9 →D/E ~E+5
Dm9 E+5(7) Am9 Am9…

【O】
Dm7 Fm →BΦ Em7…